神戸市北区鈴蘭台の住宅街にひときわ目立つ青い家がある。そこは2020年秋に開館したギャラリー&アトリエ『うわの空美術館』。芸術に興味のある人が日本各地から訪れるのはもちろん、気軽にアートに触れられる場所として近所の方々や子ども達も出入りする。オープン以来わずか1年で地元にすっかり溶け込み人気の場所になった。
今や鈴蘭台を活気づけるホットスポットとなった『うわの空美術館』。ここを作ったのは、一体どんな人?ということで、今回は設立者である田島由美さんと、魔女メグさんのおふたりにお話を伺ってきました。
館長 田島由美さん
美術鑑賞と旅行が好きで、海外に行く時は必ず美術館巡りを観光コースに組み込むという館長の田島由美さん。有名無名を問わず、好きな作品や作家に出会ったらとことん追っかける。今までで2回、絵を観て背中に電流が走ったような経験をしたという。「アートにはそんなときめく出会いがあるからたまらないんです」。退職を数年後に控えた時、田島さんはふと、いつかアートを身近に楽しめるような “私設美術館” を作りたい!という夢を持った。「このまま“ただの美術館巡りが好きなおばあさん”で人生を終わらせるのは面白くないと思ったの」。
費用面や人手を考えると1人でやるより2人の方がいい。色々な条件を考えて、一緒にやるならこの人しかいないと、声を掛けたのが魔女メグさんだった。
うわの空学芸員・アーティスト 魔女メグさん
自称338歳の魔女メグさんは若い頃にアートを学んだ。しかし人間界ではアートどころではなく、あれこれしないといけないことだらけだった。人間年齢で人生の折り返し点を過ぎたある時、鼓動の奥からズクンズクンと言う音が聞こえてきた。「私の中に、描きたい!創りたい!という想いが次々に湧き起こってきたの」。そして再び描く事を始め、今に至る。「私にとって“描く・創る” は、“喋る・歌う” と同じ生活の一部」と話す通り、とにかく何かを描いていれば気持ちが落ち着くのだという。一瞬で人の表情や物の形を捉えスケッチブックに、時にはレシートの裏に、お喋りしながらでもサラサラと筆を動かす。美術館を創りたいという田島さんからの誘いに「いいよ~!と答えたの」と微笑む魔女メグさん。またいつか・・と考えていても、そのいつかはなかなか来ない。何でも感じた時に動く!というのが彼女の信条のようだ。
お互いのことを聞いてみました
魔女メグさんから見た田島さんってどんな人?
「惚れっぽい人(笑)。惚れ込む力が半端なくて、いい作品を発掘したら作家さんに会いに行く行動力の人。いろんな人とネットワークを作れる人。物事を計画してきちんと進め、アイディアをカタチにする人。絵を描いてさえいればご機嫌な私に、道を作ってくれた人・・・つまりパーフェクトな人で、うわの空にとっても私にとっても、いないと困っちゃう人です」
田島さんから見た魔女メグさんってどんな人?
「私は彼女のブログのフォロワーでした。彼女の描く水彩画は自由で奔放で面白くて、今まで見たことがないような感じに惹かれたんです。出会いのきっかけは展覧会場に会いに行ったこと。初めて会った彼女は・・変な人でした(笑)。魔女メグの手にかかったら、初対面同士でも昔からの友達みたいにすぐ打ち解けられる。人をその気にさせるのが上手で、みんないつの間にか巻き込まれていく。そして巻き込まれた人達誰もがみんな楽しい気分になる。本当に魔法のような不思議な力を持っているんです。彼女がいてくれるから、うわの空は成り立っていると思います」
それぞれの言葉の端々から、お互いをリスペクトしている気持ちがひしひしと伝わってくる。いい相棒同志って感じですよね~と伝えると、すかさず魔女メグさんが「そう見える?2人の間には深くて暗~い溝があるのよ。でもね、深海の底をのぞくのってワクワクしていいじゃな~い」。それを受けて、フフッと静かに微笑む田島さん。やっぱりいい相棒同志だ。
おふたりに共通しているのは、“頭に浮かんだことは、とにかくやる!”ということ。「2人とも、言いたいこと言って、やりたいことやって、すぐに忘れるのが得意なの」
魔女のアトリエ
魔女メグさんは、うわの空美術館内で様々なワークショップを行っている。「みんな、絵は上手に描かないとダメと思ってるでしょ。構えすぎてアートが遠くなってるのがすごく残念!音痴な人でも歌を歌うのは楽しい、絵も一緒だよ!ってことを知って欲しくて頑張っているの」
うわの空美術館について
神戸市北区にオープンして一年、うわの空美術館は地元出身アーティスト達の発表の場、発掘の場にもなっている。「北区には様々な作家さんがたくさん住んでいるのに、横の繋がりはほとんどなかったみたい」。拠点ができたことでネットワークが繋がり、新しい広がりも見せ始めている。これからは、絵や彫刻などの展示だけでなく、ミニコンサートやフリーマーケットを開くことも考えているという。
魔女メグさんから最後にメッセージをもらいました。
「どなたでも気軽にうわの空に来て下さい。真面目な館長と、おかしな魔女が待ってますよ~!」
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小原 由美
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