㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は1999年7月のコラムです。
先日、灰谷氏たちと私の家族とで食事をしている時のことだった。女房が灰谷氏に言った。
「この前娘が言ってたんですよ。灰谷先生って有名人のくせに平気でうろうろするねんなぁって」
すると娘が即座に訂正した。「“くせに”なんて言わへんで、“なのに”って言ったの」。
言われると「くせに」と「なのに」とでは少しニュアンスが違う。私はこのエピソードで二つのことを思った。
一つは、ああ、こんな風にして人の話っていうのは変わっていくんだなぁっていうこと。
話を伝える側に悪意がなくても、どうしてもその人の感性が入り込んでしまい、正確には伝わらない。又聞き、噂話というのは恐い。細心の注意を払い、全面的に信用してはいけない。特にものを書く人間にとっては肝に銘じておかなければならないことだ。多くの週刊誌がやたらと人を傷つけているが、物書きの最低の倫理をも捨てた恥ずべき行為だと思う。
もう一つは子どもの感受性ということだ。私の娘が特別に感受性がするどいということはない。本の虫でもない。勉強ほったらかし、遊び一本のごく普通の子だ。しかし、子どもというのはよく見ている。よく聞いている。
*おとうさん 一年 おおたにまさひろ
おとうさんは こめややのに あさパンをたべる
この詩を書いた子が特別な子というわけではない。概念化の進んでいない子どもは大人よりずっと感受性が豊かなのである。
めったに人の悪口を言わない娘が、ある男の人についてぽろっと言った。
「あの人、ポケットに手をつっこんで喋るからなぁ」。
それからしばらくして、あの人結構いい人やねんと訂正していた。自分の見ていることが一面であるということも承知している。大人よりもずっと柔軟である。見えていても、聞こえていても全てを言うわけじゃない。子どもだからってなめて振る舞っていると、自分の品性を落としかねない。心しておくべきだとつくづく思う。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
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Radish STYLE編集部
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