㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は1996年11月のコラムです。
人生いろいろ、といって思い出すのは私たちの世代では島倉千代子。あの可憐な声が、歳を取っても衰えないのはどうしてだろうかと不思議に思う。しかし、私は、本人よりも島倉千代子のものまねをするコロッケという人物の印象の方が強い。2・3度見ただけで、この人は天才だと思った。
人それぞれに天才の範疇は異なるだろうが、私にとっては、湯川秀樹よりコロッケの方が天才であり、川端康成より中島みゆきの方が天才である。
論理的なもの、答えの出るものは、努力すれば何とかなる人が数多くいる。興味の方向が違うだけだ。しかし、感覚的なものは努力してもどうにもならないことが多い。大人になるに従って知識の量は増え、論理的には深まるが、感覚的にはほんのひとにぎりの人を除いて退化の一途をたどるような気がする。そういう状態をトウが立つというのだろう。
コロッケの物真似芸は、直観的に人の特徴を捉える術に長けたもののみが成し得る芸であるし、中島みゆきの言葉の使い方、比喩の使い方は、動物的な匂いすらするものがある。
感覚的なものの盛りは7歳までだろう。
日本の農村部では7歳までは神の子と言われた。また、子供は天才とも言われる。つまり、発達段階として抽象的思考に至らない子供、概念的に未発達な子供というのは、感覚的にものを見るわけで、だから天才なのである。
まあ、この子は、どうしてこんなにすばらしいことを言うのだろう、天才!と多くの親が思ったことでしょう。それが7歳を過ぎると普通の子。ごく一部の感覚的に行動する天才部分を残した子は、変わった子、個性的な子と言われ、今の日本の教育でははみだしっ子となり、やがて丸くおさめられる。
天才をもっと多く創ろうよ。天才部分をもっと多く残そうよ。そうすれば私たちのまわりはもっともっと豊かで楽しくなるのに。そんな思いでこれからの「人生いろいろ」を書いていきたいと思っている。
2020年9月の《岸本先生の人生いろいろ》はこちら
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
Radish STYLE編集部
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