㈱トムコ発行の情報紙(1996年~発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は2020年3月のコラムです。
昨年は病院通いの日々だった。数えてみれば14人の医師にかかっている。医師評論家になれそうだ。何人かの医師に「神経質になりすぎないように」と言われるし、家でも「病は気からって言うでしょ」と言われるが、実際痛いし吐き気がする。腕の痛みがひどく、紹介でペインクリニックへ行った。しかし痛みはおさまらない。「ブロックも効かないし、来てもねぇ・・」いやいや相談にのってくださいよ。そりぁ医師が忙しすぎるというのは重々わかっている。しかし、お会いした多くの医師は私が考えている医師像とはちょっと違うなと思ってしまう。患者の話に耳を傾け、心の痛みまで癒してほしい。そして今持てる知識のみで判断するのではなく、他の方法は?を問い続けてほしい。そんなことを考えている時にある医師と出会った。消化器内科へ回された時のことだ。その医師は生まれつき耳に障がいのある方だった。医師になりたいと考えていたが、「欠格条項」というのがあって、医師にはなれないと知らされる。仕方なく工学部に進学するが、3回生の時(2001年)その条項が無くなった。すぐ医学部を受けなおし、合格する。その後の努力は想像を絶するものだっただろう。勿論家族や友人の助けも彼を支えたに違いない。それらを思ったとき、私はかすかに身震いした。胃カメラでは異常はないということで、その時は終わった。3か月後、また吐き気がひどく、再び訪れた。血液検査をしたが異常がない。しかしアミラーゼ値が高い。母が膵臓癌で亡くなっていることもあって、私は膵臓を疑った。これが私の悪癖で、医者から疎ましがられるのだろう。この時も軽くあしらわれると思っていたが、彼は違った。詳しい血液検査とエコーをし、アミラーゼ値の上昇は唾液腺からだとわかった。数字の表すものから合理的に説明してくださり、不安は消えた。多くの医師たちはエリートコースを歩んできたせいだろうか、人の心の痛みや不安にまで思いを馳せるのが苦手な人が多いような気がする。私は極端な貧困だったからいくらかもがいた。しかしそのおかげで人の心の痛みには敏感になった。私の比ではないと思うが彼ももがいた時があっただろう。しかし、それがいい医師になる大きな武器になっていると私は考えている。「先生、自信をもってください」と言いたいが、言えない。私は彼ほど緊張感のあるいい生き方をしてはいないから。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
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Radish STYLE編集部
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