八月の下旬、教師になって最初の教え子たちとの同窓会があった。あまり歳の差を感じず、話が弾んだ。すき焼きだったが、誰が用意をという時「おい、お前らやれよ」と男たちが女の子を指さす。女の子たちも、「はいはい」と、嫌なそぶりもなく、男たちに卵を配り肉を焼いて用意を始めた。私に肉を入れようとするので私は「自分でします」と断った。君たちよ、SDGsを読んだことはないんかーーいと叫びたかったが、恐らく言ったところで誰も反応はしなかっただろう。
2015年、SDGs(持続可能な開発目標)が国連から発表されたが、この時、私は即座に三つのことを思った。一つは、日本語に訳された条文で、どうしてこんなにカタカナ横文字が多用されているのだろうということ。これで多くの人に伝わるとでも思っているのか。二つ目は、これらの目標の原因となった多くは、人間の「欲」が作り出したものだなということ。三つ目は、どうして「差別」に関する目標が入ってないのだろう。目標5にはジェンダー平等をうたっているが、多くの目標の陰には「差別」が隠れていると思う。人種差別、格差差別、経済差別等々。いわゆるハラスメントを含めて、それらをなくすことは大きな目標となるのではないだろうか。最近よく言われるSDGsには、節約、再利用といった身近でできる、目標12に関することが多い。これらは2030年までの達成目標としているが、もう半ば過ぎているのに達成に近づいているより、かえって悪化している方が多いように感じる。特に気候変動に関しては差し迫っていることだ。近年頻発している異常気象は、地球を滅ぼしかねないと感じるのは私だけではないだろう。しかしクリーンエネルギーだからと、原子力発電を使うのは少し違う。ドイツを見習え。
私のできうるSDGsは何だろうと考えていた。節約、再利用、男女平等は日常で実行している。それよりより神経をとがらせているのが、言葉の中にある男女差別だ。日本語には男尊女卑の言葉が数多くある。「女々しい」「男をあげる」等は考えればすぐわかる言葉なのに、歌に使われ流行し、スポーツ放送ではアナウンサーが連発している。これほど共稼ぎが増えても女は「嫁」「家内」として「主人」に仕えることに疑問を持たない人はまだまだ多い。日本の男女格差値は世界の一四六か国中一二五位で、ひどい、の一言に尽きる。
男女差別はすべての差別や、欲の入り口にあると私は考えている。己の中に男女差別が残る限り、すべての差別を話す資格はない。その意味で日本のSDGsは非常に危ういし、広がりを見せないのは、もっともだと頷けるのである。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
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