㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は2000年1月のコラムです。
私は仕事に飽きると庭に出る。ほんの二、三歩でぶつかるほどの狭い庭だが、小春日和に、ふくらんでくる梅のつぼみを眺めたり、土から顔を出した水仙の芽をのぞいたりしていると時間を忘れてしまう。ところが不精なものだから庭は見るに耐えぬほど荒れている。せめて鉢植えなどきれいにしようかと思い、先日チューリップの球根を植え、ビオラの寄せ植えを三鉢作って玄関先に置き、たっぷりと水をやった。私は水をやるのが好きである。好きというより、やらなければ枯れるという強迫観念じみたものがある。仕事で三日も家を空ける時など、ずぼらな女房にくれぐれも水やりを忘れぬようにとおどすように念を押して出かける。
植えかえたばかりだからと、ビオラが水に浸るほどにやっていると、「あ、あのう、ちょっと」と、声が聞こえた。お隣の夫人がすぐ後に立っていらっしゃる。
「すみません、差し出がましいですけど、ビオラって水をやりすぎると、春には上に伸びるばかりで花も寂しくなるんですよ。四日に一度ぐらいにすると、下へ下へと根が張って、春にしっかりと広がるんです。花によって違いますが、水をやりすぎるのは・・・・」
この方は花屋さんをしておられた専門家だ。
「男の人って甘いのか、うちの人もしばらく水をやらないと、お前は薄情者だって」
花の一生を責任もって見てやると分かるもので、短絡的に甘やかすと根を張らないで粗末な一生を送ることになるらしい。つまり、苦節に耐えさせなければ花って強くならないという。
それってひょっとして子どもと一緒かも、と思った。子どもの一生を考えないで短絡的に叱ったり甘やかしたりしてしまう。生活のなかでそんな場面は多いような気がする。もしや女房は私よりもずっと大きな目で子どもや植物を見ていたのかもしれない。
「草花って置かれている場所に適応し、そこに合った形になっていくんですよ」
いろいろな話をお聞きしているうちに、なんだか植物を育てるのが恐ろしくなってしまいました。
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今井令子
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