㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は1997年11月のコラムです。
PTA主催の講演会では、どうしても「子育て」についての話が多くなる。話した後で質問の時間を設けるが、そこで必ず出てくる質問がある。「私は子供に口やかましくて、いつも主人に叱られるんです。少しは我慢をして、自由放任にしたらどうだって」
先日もこの質問に答えようとして、ふと考えたことがある。母親は父親よりはるかに長い時間子どもと接するからそうなるんじゃないかなって。子どもの見方に個人差はあっても、男女差があるようには思わない。いけないことはいけないと言いたくなるのはだれも同じだ。社会的な役割分担がそうさせているのだろう。「ねえ、長い休みだから、一度私と役割分担を交替してみない」とやってみたらどうなるだろうか。
私の家では、女房が働き、私は主夫をしているから、当然子どもと接する時間も長い。我慢をしようと思うが、つい小言が口をついて出る。という悩みを私も抱えている。
そこで次のことを考える。じゃ、自由放任にすればいいんだろうか。よく言う「たくましい子」に育てるために。
人はそれぞれに、生きる上での「価値観」を持っている。それにのっとって、子どもの行動や考え方で、どうしても許されない時、それはおかしいんじゃない、とはっきり言う必要はあるのではないだろうか。家庭が、子どもたちに価値観を伝えていくという役割を放棄してしまったら、大変なことになる。だからといって、口やかましく押し付けていいというのではない。子どもはロボットではなく、人格のある人間なのだから、考える場を持ってやらなければならない。自由放任というのは、その場が約束された上でのことだろう。
どうしても許されないこと、これは自分で考えるべきこと、どちらでもいいやということ、この3つの価値の在り方を、その線引きは難しいが、家庭のなかの大人達が、一度は話し合う必要があるのではないかと思っている。これ以上少年犯罪を増やさないためにも。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
Radish STYLE編集部
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