絵本大好きなオハラです。今回は、新型コロナの影響がジワジワと世界中に広がり始めた昨年春に出版された “アネモネ戦争” という絵本をご紹介します。
アネモネ戦争とは
神戸在住の現代美術家 上村(うえむら)亮太さんが手掛けた、初めての絵本。この本の基になったアートブックに感銘を受けた画廊主(ギャラリー島田 島田誠さん)が、フリー絵本編集者(松田素子さん)とタッグを組んで一般から支援金を募り、2020年3月出版に繋げました。
最初は500冊の限定本として出版されましたが、反響が大きく、同年10月に普及版としてBL出版から刊行されました。
絵本 アネモネ戦争の基になったアートブック
あらすじ
遠い昔のこと、ある国の王様が美しいアネモネの花を独占したくて、戦争を起こします。人々は、嫌だと思いながらも黙っていました。すると、誰も気付かないうちに戦争は始まります。どんな事が起きているのか人々にはわかりません。次第に街から笑い声が聞こえなくなっていきます。人々はもっと黙るようになり、なにかを自分の目で見ようとすることを、やめました。・・・でも、それこそが戦争だったのです。
やがて、平和を願った一人の少女が、小さなのろしを掲げます。そののろしは風に乗り国を超えて・・・
絵本に登場するアネモネ “フルゲンス ホワイトシェード”
絵本ができるまで
ひとつのシーンを描きあげる度に、編集者と話し合い、何度も何度も絵を描き直したという上村さん。最終的には、40ページの絵本を作るために、2000枚以上の原画を描いたそうです。
こうして、優しく穏やかな中にも、切なさや凄みのような強さも感じさせる絵が並ぶ “アネモネ戦争” ができあがりました。
アネモネの絵の試作
編集の仕事
作家の上村亮太さんと二人三脚で “アネモネ戦争” を誕生させたのは、40年に渡り様々な絵本の誕生に立ち合って来たフリー編集者の松田素子さん。松田さんは、初めて “アネモネ戦争” の物語に出会った時に、衝撃を受けたと言います。
「戦争を始めるのは国の偉い人達。でもその戦争を“育んでいる”のは、私達自身・・。長年編集の仕事をしてきましたが、自分自身が戦争の当事者であるということを訴えた絵本には今まで出会ったことがありませんでした。」戦争という言葉が使われているけれど、強く平和を願うメッセージが込められていると感じとった松田さんは、編集者として今出すべき本だと直感したそうです。
美しい青色が印象的な表紙。本の帯の下には、素敵な仕掛けが隠されています。「本を買って下さった方だけが知る秘密。素敵でしょう」と、松田さん。ぜひ、皆さんに見てもらいたいなぁ!
神戸ゆかりの絵本
この絵本は、作家、編集者、デザイナー、印刷所、出版社に至るまで、全て神戸&兵庫県在住の人達から生まれました。海、山、教会、モスクが描かれているページ。これはもちろん神戸をイメージしているとのこと。神戸在住の私としては、 “アネモネ戦争” が、神戸ゆかりの絵本だということが、とても嬉しく誇らしい気分です。
最後に
ひとりの少女が掲げる小さな「のろし」。のろしとは、自分の思いを、誰かに伝えるための合図・・。この本を読んだ時、まわりに流されるままになってないか、自分の頭でちゃんと考えているかと、私は自分のことを色々と振り返りました。
“アネモネ戦争”が発表されたのは、世界中が新型コロナの脅威に怯え、個々の殻に閉じこもるような生活を強いられ始めた頃。それは偶然ではあったけれど必然だったような気がします。
私が開いている大人向け絵本の会で、絵のついた本は教科書しか見たことがなかったという80代の男性が『絵本は子どもの物という概念が覆った』という感想を言ってくれました。ぜひ今、多くの方に読んでいただきたい一冊です。
★アネモネ戦争のHPはコチラ
3月31日まで 原画展開催中!
★会場:MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店7階 “salon de 7” 阪急電鉄 大阪梅田駅 茶屋町出口から徒歩5分
★2021年3/6(土)~3/31(日)まで 10~21時
小原 由美
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