㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は1997年7月のコラムです。
私は仏教彫刻が好きな為、東南アジア各地を旅することが多い。旅をしている私の心を休めてくれるものの1つは子どもだ。子どもたちとはすぐ仲良くなれるし、彼らを通じてその国の本質を見ることも多い。
その子どもの外見上のことで、何年か前から思っていることがある。日本の子どもは東南アジアの子どもと殆ど変わらないのに、1つだけ違っていることがあるのだ。
つい最近、香港へ行ったときのこと、ぞろぞろと校門から出てくる小学生に出会って、やはりそうだと思った。日本の子どもには肥満体型が多いのである。
最近では1クラスの子ども集団があれば、確実に4・5人の肥満体型がいる。多い時には2・3割にもなる。明らかに異常である。これは由々しき社会現象であるということに早く気付かねばならない。
人は自然の一部で、動物にしても子どもにしても、自然のままで肥満になることはない。それは不自然なことなのだ。この不自然はどうして起こるのだろうか。
1つには人間の食物が自然から離れすぎてきたせいだろう。
自然のものをうまく食べていけば、必須栄養素はまずきちんと取れ、バランスよく発育する。自然とは離れた人工的なもの(インスタントラーメン、清涼飲料水、スナック菓子など)は、栄養素は殆どなく、あるのはカロリーのみ。それらを多食すれば当然肥満になる。その上体は自然から遠ざかり、ひ弱になっていく。
それでもごく普通の子どもの運動量があれば、肥満にならないかもしれない。しかし子どもの遊びも不自然に、人工的になってきているのは先刻ご承知の通りで、子ども達は今や動かずに遊ばせてもらえるようになってきている。体は動かさず、人間と関係せずに遊ぶと、心は調和的な発達をしない。そして現代病といわれる様々な心身症を生み出していくことになる。
子どもの肥満であれ、女の人の痩せすぎであれ、体の不自然さは体の問題ではなく社会問題である。そしてそれは、人間が自然から遠ざかりすぎたことへの警告と受け取れるではないだろうか。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
Radish STYLE編集部
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